Happy birthday to eichi

 

917日。風の強い今日、棗の家でパーティーが行われようとしていた。

「早く準備しないと英知来ちゃうよー!」

遼はキッチンからリビングの様子を覗いて声をかける。リビングでは掃除をしている男が2人。棗は掃除機をかけ、凪ははたきでパタパタとテレビの上などをはたいている。那緒には買出しに行ってもらっている。遼は鍋の中を気にしつつも苺を切っていく。

その中に英知はいない。そう、今日の主役は英知。英知の誕生日なのである。

「ただーいまー」

那緒が意気揚々と玄関の戸を開け放って入ってきた。手には近くのスーパーの袋を2つばかりぶら下げている。

「はい遼。これでいいのか?」

那緒はカウンターにバジルと卵、チョコペンを置き遼に尋ねた。

「うん。ありがとー」

遼は笑顔で答えると鍋から茹でていたパスタをあげてお湯をきると隣りにあったフライパンで炒めていた具材と合わせてバジルを振り掛ける。

良い匂いがリビングまで流れていく。棗と凪は掃除を終え、食器類をせっせと並べていく。英知が来るまで後15分である。

遼はオーブンからスポンジを取り出す。英知の好きな紅茶のシフォンケーキだ。生クリームを上部に軽く流し、苺とチョコレートプレートを乗せ、ハーブもあしらう。遼は満面の笑みを向けてリビング振り返った。

「出来たよぉ!」

「こっちも準備出来た」

遼はケーキにラップをかけると冷蔵庫に仕舞った。準備は整った。英知が来るまで後10分。

しかし、あの英知が時間になるまで来ないというはずもなく。

インターフォンが鳴り響いた。

 

「「「「誕生日おめでとう!」」」」

パーンとクラッカーが鳴り、英知は玄関で立ち尽くした。

「・・・・・・あぁ、今日は俺の誕生日でしたか」

英知は数回瞬きをするとふわっと笑んだ。

「ありがとうございます」

「どういたしましてぇ♪」

「御主人やばいっその顔はやばいっ!」

「・・・・・・変態」

「棗だもんなぁ」

英知をリビングへ招き入れるとテーブルにつかせる。遼は冷蔵庫からサラダを取り出し、テーブルの中央に置く。そのままとって返してパスタの皿を配る。他にも鶏肉のから揚げやサーモンと海老のマリネなんかを次々に並べていった。

「これ、遼が作ったんですか?」

「えへ〜そうだよ!俺実は料理得意なんだ♪」

那緒が買ってきたシャンパンを開けてグラスに注ぐ。

「んじゃ、食うか」

棗の声を皮切りにいつも以上に賑やかな夕食が始まった。

 

「満足ですよ。ありがとう」

食事も終わり、皆まったりとした雰囲気である。

「えっと、ケーキはもうちょっと後にして、プレゼント渡しちゃおうか」

凪の提案により、各自鞄から包装された包みが出てくる。

「これ、俺から」

凪の渡した箱は普通の大きさでシンプルな包みである。英知が促されてリボンを解くと、中から薄い青色がかったガラスのティーポットが出てきた。

「もうアイスティーよりホットって時季だけどさ」

「いえ、嬉しいですよ。ありがとう」

英知はティーポットを箱に戻すと丁寧に包装し直した。

「じゃ、次は俺ね」

那緒が無造作に缶を渡す。

「本場のダージリンだってさ」

「って、これキャッスルトンじゃないですか!高かったでしょう?」

「何だそれ?一応一番高い奴だけどさぁ」

「本当にアバウトですね。ありがとうございます。今度那緒にも淹れますね」

紅茶の入った缶をそっとテーブルの上にポットと並べて置く。

「はい、俺はこれ〜♪」

遼は遼の母親の自社ブランドの包装の大きな包みを渡した。開けると中からジャケットを始め、ズボンからパーカ、果ては靴まで出てきた。

「えへへ〜実はこれは世界で1つだけの服達なんだよ!」

「どういうことですか?」

「ふふ〜vv世界で1つの遼プロデュースなんです!!俺が全部デザインしたんだよ〜」

「そうなんですか?ありがとうございます」

英知は丁寧に服類を袋に戻す。

「俺は俺がプレゼンッ」

「ふざけないでください」

腕を広げた棗に対して英知は傍にあったワインボトルで遠ざける。

「すいません・・・・・・嘘です。本当はこっち」

ボトルを持った手をひき、ボトルを離させると指輪をそっとはめいれた。

「・・・・・・これ」

「俺からのプレゼントvv」

指輪はシンプルな造りでシルバーのリングの中央に控えめに光るサファイアがはめ込まれている。

「サファイアは御主人の誕生石。『信頼』『誠実』『真実』のシンボルなんだぜ」

棗の言葉に英知はぷいと顔を背けると

「かっこつけすぎです」

小さく呟いた。周りの3人は微笑むと2人を見ていた。

「んじゃ、ケーキ食うか!」

「持ってくるね〜vv」

遼はシフォンケーキを冷蔵庫から取り出すとテーブルに運んだ。蝋燭に火を灯し、電気を消す。

「ささっ英知吹けよ☆」

「一気ね。一気」

促されるまま英知は蝋燭の火を吹き消した。

「改めて、おめでとぉvv」

遼は人数分にケーキを切り分けると各人に配る。英知が自ら進んで那緒からもらったダージリンを淹れ、ケーキを和気藹々と食べた。

 

・・・・・・そこで終わるようではkeenメンバーではないわけで・・・・・・。

「よっし!飲むか!!」

「はい?」

気が付くと那緒がワインを開け、グラスに注いでいる。すでに凪と棗は飲み始めている。

「ちょっと何してんですか!」

「いいじゃん御主人。こんな夜は無礼講だって♪」

棗は英知のグラスにワインを注ぐと自分も呷った。英知は嘆息すると「一杯だけですからね」とちびりちびりと飲み始めた。

 

「・・・・・・だから嫌だったんですよ」

英知は部屋の状態を見て頭を抱えた。

部屋は騒然としていた。棗はひたすら絡んでくるし、遼はほとんど赤ちゃん状態である。那緒と凪が帰ってくれたのには助かるが・・・・・・。

因みに遼はめっぽう弱い。それなのに棗と那緒に乗せられて(飲めないなんてお子ちゃまでちゅね〜とか言われて)一杯飲んだ結果がこれである。

「御主人〜vvv」

「ちょっと!いい加減にしなさい!!」

英知は棗の頭を叩くとソファに座り込む。棗は叩かれた頭を撫でてむぅとふくれる。

「いいじゃんかー御主人のケチ」

「・・・・・・子供がいるからだめです」

ソファに座った英知の膝の上にころんと寝転んだ遼の頭を撫でて言う。棗はしばし思案に暮れ、何かを思いついたのか遼の耳に口を寄せると

「遼は猫な。にゃーって言ってどっか行け」

にやりと笑った。

「にゃーあ?」

とろんとした目で遼は鳴くと英知の膝に顔を擦りつけた。それを見た英知は顔を顰めて自分の持ってきた鞄から洋書を取り出すと、そのまま棗の頭に振り下ろした。

「まったく、よっぱらいの相手は面倒です」

英知は遼の頬を軽く叩いて立ち上がらせた。

「えーちぃ?」

「まったく、弱いんだから飲まなければいいのに」

英知は嘆息すると遼を支えて寝室に向かうとベッドに入り、2人は眠りについた。

 

翌朝・・・・・・

「御主人!?何で遼と2人でベッドインしてんの!?」

「いかがわしい言い方はやめなさい。そのまま寝ると風邪をひくでしょう。最近は朝夕は冷え込みますからね」

未だ寝ている遼を残して英知はベッドから出ると朝食を作る為にキッチンへ向かった。

でもまぁ、昨日は嬉しかったですし・・・・・・。

英知は指輪を眺め微笑すると、いつもよりも丁寧に包丁を動かし始めた。

賑やかな朝食が始まるのも、後もう少し・・・・・・。