「海行こうぜ☆」
ある男の一言から始まった。
Keenで一番喰えない男・・・
中原那緒から・・・


Keenで旅行。



ただいま棗が運転する赤いポルシェにKeen一同が乗っている。
「ねぇ、まだ着かないの?」
後部座席で凪が喋る。
「あと5分もかからねぇんじゃねぇか。お,見えてきた」
「ふぅん、けっこう近場なんだ」
「そうだね☆ここは専用ビーチだから気にせず使ってくれな♪」
と那緒がニヤリと凪に笑い返す。
「あはは。楽しみだね〜。俺,水着買っちゃったよ。というか母さんが作ってくれた
んだけどな」
と軽快に遼が笑う。
「そうですね。楽しんでください」
と言ったのは英知。
「え?英知,お前も遊ぶんじゃねぇの?」
「棗。運転に集中してください。焼けるのが嫌なだけです。俺,肌が弱いみたいですから」
「ふーん」
棗はつまらなそうに,英知に向いていた目を前に戻した。
「着いたみたいだな☆行くぜ」
「おー!うわー,すげー。綺麗な海ー!!!」
「俺らしかいないしね。」
那緒,凪,遼は騒ぎ始める。



棗は車から荷物を出し始める。
英知は棗の手伝いをし,荷物を運び始めた。
「おーい,そこの三人。ご主人だけが運んでるじゃねぇか,手伝え」
「「「はーい」」」



準備も済み,パラソルの下に英知と遼と棗。
海には凪と那緒がいた。
潮の香りがするなか,英知は本を読んでいる。
「やったなー!」
「ふっ」
隣では棗に遼が遊ばれていた。


海の方では那緒が凪で遊んでいるのが見える。
「あの海まで競争しない?凪v」
「何で。面倒くさい。」
「・・・・・・負けるのが怖いの?」
「な・・・・っ!!・・・いいよ、やろう。」
「じゃあ、負けた奴は勝った奴の命令を聞くってのはどうだ?」
「そんなこと言って、負けても知らないからなっ」
ものすごい勢いで凪が海に飛び込む。
その後を優雅に那緒が泳いでいった。


「なぁなぁ,どっちが勝つと思う?」
遼が興味津々に聞いてきた。
「あ?そりゃ,那緒だろ」
「そうか?俺は凪にがんばってほしいけど。英知は?」
遼が英知に問うと,英知は視線を棗と遼に向けた。
「那緒ですね・・・」
「ああ,で,とうぶん帰ってこないだろ。あいつら」
ニヤリと棗が笑う。
「え?何で何で???」
遼が棗に聞いた。
英知はもう,本を読み始めている。
「何でだろうな〜。何なら麗に聞いてみるか?」
「むぅ!なんでそこに麗が出てくるんだよ!!」
「さぁな〜」
「むかつくぅぅ!!!」
ばたばたと小動物の様に遼は手足を振る。
にやっとした顔のまま,棗は軽く遼の頭をなでた。

そして,英知の本をさっと取る。
「・・・・・」
英知は不機嫌そうな顔をして棗を睨んだ。
「こんなところまで来て読書すんなよ。な?ご主人」
「返してください」
「遼も何か言えよ。ほら」
「知らないもーん。英知の好きなようにすればいいと思うけどー?」
「こいつー」
「なんだよっ!」
また,遼と棗のけんかが始まる。
「で,何なんですか?棗」
それを英知がたった一言で制した。
棗の動きが止まる。
「俺だって英知とラブラブしたいんだよ」
「遼としてください」
そして,かわいく言ったセリフを軽く英知に流される。
「英知ー。旅行だぜ?あそぼーよー」
「遼・・・。はぁ・・・。わかりました。何をするんですか?」
「なんで遼の言うことは聞くわけ?」
ブーブーと棗が抗議した。
「気分の問題です」
「ちぇっ」
「あ。そろそろ島についたころじゃねぇ?」
遼が二人に言う。
「そうですね」
「だから,当分帰ってこねぇって」
「やっぱり,那緒が勝ったようですね。おや,凪はバテてるみたいですよ」
「本当だぁ。凪は体力ないもんなぁ・・・」
「無謀ですよね・・・」



かすかに見える遠くの島で那緒が手を振っているのが見える。
その脇には凪がくたっとなって抱えられていた。
「バカだよなぁ・・・」
ぼそっと棗が言ったのを英知も遼も聞いていなかった。
「よぉし!遊ぼう!海入ろうよ!!!」
遼が言い出す。
「水着を持ってきてません」
それを英知が否定した。
「俺もー」
棗も賛同する。
「せっかく持ってきたのに・・・。俺もあの島まで行こうかなー・・・」
遼がぽつりとつぶやいた。
それを聞いて棗が慌てる。
「いやっ!ダメっ!行っちゃダメだ!」
「何でさー?」
遼が反論した。だって暇なのだから・・・
「ともかくダメなの!ほい。お茶でも飲んでなさい」
「わかったよ。棗のケチー」
「俺も遊びますから,海には入れませんけど。何しますか?」
「うーん・・・鬼ごっこ?」
小首を傾げて遼が答えた。
「なるべく動かない方がいいんですが・・・」
「あ,そっか。英知は肌弱いもんね」
生まれつきの性質か,英知は肌が弱い。すぐに焼けてしまうのだ。


「ロシアン・ルーレットなんてどうだ?」
棗がにかっと笑って言った。
「わぁ!楽しそうだね!どう?英知」
「いいんじゃないですか・・・」
「こんなこともあろうかとちゃんとセッティングしてきたんだよな」
クスッ
怪しく笑って棗は隣にあった鞄を開けた。
そこにはミニシュークリームがたくさんあり,端には怪しげな小瓶が置いてある。
「何あれ?」
遼が小瓶を指さして答える。
「魔法のクスリ。じゃ,やるか?」
3つ,シュークリームが並べられる。
どこからどう見てもただのシュークリームだ。
外見からだと全く判別がつかない。
「じゃ,俺これな」
棗が先に一個目を取る。
「俺はこれっ!」
次に遼が取った。
「では,俺は最後のを・・・」
「「「いっせーので」」」
ぱくっ



一斉に三人はシュークリームを食べた。
「おいしいです」
最初に言ったのは英知。
「俺も〜」
棗もきれいにシュークリームを食べている。
「ということは・・・・」
「う・・・まず・・・うぇ・・・」
バサリ
という音をたて,遼が倒れた。
「遼っ!!!棗,何を入れたんですか!?」
英知が慌てて棗に聞いた。
「何って・・・。わさびと麗が作った怪しい物」
「はぁ・・・。麗の作った物はあれほど危険だと言ったじゃないですか」
「くれたんだよ。ロシアン・ルーレットなんてどう?って」
真っ青になって倒れている遼にタオルをかけ,英知はため息をついた。
「遼,気絶してますよ・・・」
「ああ,麗が食べても命に別状はないからだとさ。2時間後ぐらいには覚めるって
言ってたぜ?」
英知にはため息しか出てこない。




くいっ
「!?」
いきなり英知の顎が上がった。
そして唇にやわらかい感触が降ってくる。
「な・・つめ」
「これで,二人きりだな。ご主人♪」
「・・・・・・ふざけないでください」

ドゴッ
というすさまじい音がしたかと思うと,青髪の人物は倒れていた。
「ふぅ・・・」
棗をそのままにし,英知は何事も無かったかのように棗に取られた本を読み始めた。

本の題名


Bushido-武士道-


そして,2時間後に那緒と凪が帰ってきた。
那緒が上機嫌で凪の顔がかすかに蒸気していたのは
那緒と凪と神のみぞ知る。




END